血栓塞栓症リスクの評価~CHADS2スコア・CHA2DS2-VAScスコア~

本記事では、私が病棟薬剤師として担当していた循環器分野より、 DOAC(直接経口抗凝固薬)(以前はNOACと呼ばれていた…)やWf(ワルファリン、ワーファリン)といった 抗凝固薬を服用する際に重要となる、血栓塞栓症リスクの評価を簡単にまとめてみた。

血栓塞栓症のリスクについて

DOACやWfの使用には、血栓塞栓症リスクと出血リスクの両方に注意が必要だ。出血リスクについては別記事に記載する。抗凝固療法の必要性を評価するCHADS2(読み方:チャッズツー)スコアは合計6点で評価、CHA2DS2-VASC(読み方:チャッズツー・バスク)スコアは合計10点で評価し、点数が高くなるにつれて血栓塞栓症のリスクも上昇する。その2つのスコアについて、以下に載せた。実際に抗凝固療法を実施する際には、それぞれの患者でリスク(出血性合併症等)とベネフィット(血栓塞栓症の回避)を考えることが肝となる。

CHADS2スコア

抗凝固療法の必要性を評価する上で高く推奨されているのが、このスコアである。 日本循環器学会 / 日本不整脈心電学会合同ガイドライン「2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」によると、0点が低リスク、1点が中等度リスク、2点以上が高リスクとされ、1点以上でDOACが推奨されている。このスコアの他にも心筋症や血管疾患等のリスクがある場合も、DOACが考慮される 。

危険因子 点数
Congestive heart failure 心不全 1
Hypertension 高血圧 1
Age 年齢:75 歳以上 1
Diabetes mellitus 糖尿病 1
Stroke/TIA 脳卒中 /TIA 2

CHA2DS2-VASCスコア

ESC(欧州心臓病学会)の心房細動管理ガイドライン2012では、CHA2DS2-VAScスコア2点以上で経口抗凝固療法が推奨されている。特に抗凝固療法が不要な真の低リスク例の検出に有用とされている。つまり、CAHDS2スコアでは0点であっても CHA2DS2-VAScスコア では点数がつくような血栓塞栓症リスクのある人(心血管疾患等)を除くことができる。

危険因子 点数

Congestive heart failure/
Left ventricular dysfunction

心不全/
左心室機能不全
1
Hypertension 高血圧 1
Age 年齢:75 歳以上 2
Diabetes mellitus 糖尿病 1
Stroke/TIA/TE 脳卒中/TIA/血栓塞栓症の既往 2
Vascular disease

血管疾患(心筋梗塞、
末梢動脈疾患、大動脈プラーク)

1
Age 65-74 y 年齢:65~74歳 1
Sex category 女性 1